異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 辿り着いたのは海岸線ギリギリの海の側。海上のまだ先に、その暴風の眼があった。


 眼下に見える人の塊。

 目を凝らしてみるとなんとか騎士団の人たちだとわかる程度?

 まあでも、どうやら先頭に一番派手な甲冑をつけたのがいるから、あれはマクシミリアンかな……?

 どうせマクシミリアンの事だから後ろの方で威張ってるだけかと思ってたからちょっとごめんなさいだ。

 自ら先頭に立って指揮してるんだとしたら、ちょっと見直してあげないといけないよね。

 なんて考えてたら魔法で固められた無数の炎の槍が打ち上がった。

 通常ではとても届かないほどの上空にある暴風の眼、そこにある真っ赤な竜玉になんとか刺さるように飛び込んだその槍。

 しかし、なんの反応も無く。

 次から次へと槍を飛ばす彼ら。でも。

 だめだよ。

 あれは次元が違う。

 突き刺さったように見えたそれらの槍は、その眼をすり抜けはるか向こうの海の中に落ち炸裂した。


 その眼がギロっと瞬いたかと思ったその時だった。

 巨大な竜の頭がそこに現れた。

 暴風雨を巻き起こしている真っ黒な雲から腕、足、巨大な尻尾をはみ出して、それは空一面を覆うような巨大な竜となり。

 そして。


 ガバッと開いた口から真っ赤な炎を吐き出すレッドクリムゾン!


 だめ!

 滝のように噴き出されるその炎。あんなものがあたったら、みんな死んじゃう!!



 あたしはドラコの上で立ち上がり、そのまま跳んだ。

 背中にアウラ、アウラフェザーを纏い。

 そしてその炎の滝の目の前に自分の身体を投げ出した。

 そして。



 両手を前に突き出して。

 そこに、円形に広がるカノープスの盾を顕現させて。




 炎のプレスが止むまで、ほんの数秒ほどだったか。

 なんとか背後の騎士団を護ることができたことを確認すると、

「アリア! お願い! 彼らを護って!」


 そう叫んでそのまま紅竜に向かって飛ぶ。

「マリカ!」

 って背後から声が聞こえた。

 あれは、アーサー、かな。

 無事だった。良かった。



 ディンを集め右手に光の槍を創り。

 ブラドを集め左手に漆黒の剣を顕現させる。


 そうしてそのままレッドクリムゾンの眼に向かって全速力で飛び込んだのだった。
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