異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 最初はからぶった。

 その魔竜の眼に向かって突撃したあたしはそのまま気持ちの悪い竜の頭を素通りして後ろに回る。

 ええい! それでも!

 レッドクリムゾンはアウラの塊。なら、あたしのこのアウラフェザーで追いかけられるはず!

 ——考えるんじゃ無いの。感じるの。

 そんな言葉が頭に浮かぶ。昔誰かに聞いたっけ。レティーナ様にもそう言われた気もする。

 あたしはうだうだと自分の頭で考えるのを放棄して。

 ただただその身をアウラに任せてもう一度クリムゾンのその首筋に突っ込んだ。

 ザクっと右手の光の槍が刺さる。手応えあり。

 ギャンオー!!

 と叫ぶ紅竜クリムゾン!

 あは。行ける! あたしの攻撃当たったよ!

 そのまま光の槍を突き刺したまま背中を尻尾の方まで駆け下りるあたし。

 クリムゾン、尻尾をブン! っと振り回してあたしを振り払おうとする。

 ええいあ!

 目の前に降り下される尻尾を左手の漆黒の剣で切り払う。

 あたしの手にあったその剣はまるで巨大なツルギかと思われるほどの長さまで伸び、スパン! と、その尻尾の先を切断した。

 切り離されたその尻尾が光と共に弾け。そしてそれは素のアウラに戻って行った。

 うん! この調子で!

 あたしはそのまま紅竜の周囲を飛び回り剣を振るう。

 レッドクリムゾンの表皮を剥ぎ、そして段々と小さくなっていくその竜。

 時々頭を振り回して大きな口を開け吐き出す炎のブレス。

 下にいる騎士団の、軍隊の前にはドラコが次元の壁を張り防いでくれている。アリアがそう指示を出してくれている。



 行けるよ! うん。 

 あたしはちょっと調子に乗って、そのまま縦横無尽に飛び回り攻撃を加え。

 見えて無かった。


「マリカ! 後ろ!」

 誰かの、そんな叫び声が聞こえて。

 はっと後ろを振り返ったとき。



 そこにはさっき切り離したはずの尻尾の先が。まだ拡散しきれず残っていたかけらが。

 あたしの背後からぶつかって来た。一瞬。その衝撃であたしは意識を失った。
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