異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 どういうこと?

 ——今ならね? 行けるよ。まだ刻まれてるものあなたのここに、(レイス)に。

 茉莉花の世界ってこと?

 確かに茉莉花の世界とアリアの世界は同じかもしれない。けど。 

 ——そうだよ? 茉莉花の世界にはアリアが居たんでしょう?

 でも。たぶん何年か違うんだよ。

 ——それくらいなら大丈夫。この子の身体に聞くよ。

 え?

 アリアを撫でていたはずの右手がその頭を優しくこちらに引き寄せる。

 あ、身体のコントロール、盗られた?

 あたしの身体はそのまま彼女、アリアの額に口付けて。

「ひゃぁ!」

 びっくりしたアリアの口からそんな声が漏れているけどお構いなしで。

「うん。わかった。じゃぁ、跳ぶよ。心の準備、いい?」

「え、何?」

「あなたのもと世界っていうところに跳ぶの」

 そこまで言うとシュッと奥に戻っていった? アウラ・クリムゾン。

「ごめんアリア。アウラに身体のコントロールとられてた。でも、今なら帰れるってアリアの世界。だから、一緒に跳ぼう。しっかりつかまってて」

 そう言って、あたしはアリアを抱きしめた。

 アリア、驚いてちょっと顔が赤くなってる、けど。

 でも、同意してくれたっぽい?



 あたしの身体から紅い粒子が湧き出てきて光のバリアのようにあたし達を包む。

 それはまるで真っ赤な弾丸のように。紅く、流線型に。


「マリカ!」

「マリアンヌ!」

 背後からアーサーとマクシミリアンの声。

 ああ、でも。


 あたしは無意識に二人に向かって手を伸ばした。

 そして。

 たぶん、どちらかの手を掴むとその彼を自分の光のバリアの中に引き込んだ。

 アリアは必死にあたしにしがみついている。


 あたしたち三人は、完全にその紅い粒子と同一化し、光となってその場から跳んだのだった。





 ■■■■■


 あと一歩で届かなかった……。

 マリアンヌ……。


 幼少の時より恋い焦がれていた少女。

 いとこなのにあまり遊んだ記憶は無いけれど、それでも一度だけお母様が病床の折に、見かけて。恋に落ちた。

 声をかけようと思ったのにできなかった、あの子に。


 あの、お母様の薔薇園で天使のように微笑んでいた彼女。

 ああ。

 何故。

 あの微笑みはわたしに向けられて居ないのか!

 何故。



 その時は知らなかった。

 自分とそっくりなあの少年。

 マリアンヌの手を引いて微笑んでいるそれ、が。

 まさか自分の腹違いの妹だなんて。



 いや。

 本当は弟だったかもしれなかったのだとは。
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