異世界猫。王子様から婚約破棄されましたが、実は聖女だったのでまったりもふもふ優しく騎士様に愛されます
 しかしまあ。

 こんな格好では繁華街ならともかく住宅街だときついよね? 

 どうしよっかなと自分のレイスの中を漁ってみる。

 うん。いつもの普段着用のワンピースならあるかな。

 あたしのサイズなのでちょっとアーサーには小さいかもだけど今の騎士服鎧じゃちょっと流石にまずいから。

 ということでちょっと近くにあった公衆トイレで着替えることにした。大きい誰でもトイレ? 男女の別なく入れるそこに三人で篭って着替える。必要な人が来るかもだからいそがなくっちゃね?

 とりあえずあたし用の花柄のワンピとアーサー用に無地の白いワンピース。あたしはショールでアーサーにはカーディガンを貸してあげた。

 アリアはマジカルレイヤーをとけば普通に普段着だったし大丈夫だったからそれで。

 アーサーはまだ無口なまま、あたしが言う通り着替えてくれた。ちょっと茫然自失してるのが続いてる。うん。しょうがないかなぁ?

 そのまま電車とかにも乗れないから歩いて繁華街を抜ける。ちょっと周りが住宅街っぽくなってきたかなぁ?

「ねえ。このまま歩くとどれくらいかなぁ?」

「そうですね。三十分くらいでしょうか」

「ならよかった。暗くなっちゃったらどうしようかって、ちょっと思ってたんだ」

「お金、持ってくればよかった……。ごめんなさい」

「ううん。急だったししょうがないよ。それよりも、アリアの家に急ごう」


 とぼとぼ歩いてなんとかアリアのおうちのそばまできたところで公園があった。ひょっと猫が顔をだして。

 黄色い大きなその顔は、野良ボスっぽく見えたかな。

「ああ、ここはあたし猫公園って呼んでるんです。ここに来るとわりと猫と遭遇するんですよ。本当は水花公園って名前なんですけどね?」

 アリアの顔がちょっと笑顔になってる。うん。その方がいいよアリア。

「あは。少し笑顔になったね。よかった」

「ええ。もう、ここまできたらどうにでもなれ、な、気分です」

 そうだよね。なるようにしかならないしね。


 公園を抜けたところで。

 前を歩く二人の学生さん? 


「あ……」

 口に手を当ててその場に立ち止まるありあ。

「知ってる人?」

 後ろ姿だけだけど、きっとアリアにはわかる、知り合いなのだろう。

 二人ともブレザーにミニスカート、だけど。

 なんだかね。

 右の子はまあ普通? 左の子は、ちょっとボーイッシュな感じ?

 その、左の子がふっと後ろを振り向いた。


「え、なに……」

 と、隣の子も振り返る。


「ありあ!」

 こちらを見たボーイッシュな子がそう叫ぶ。

「あきさん……」

 涙声でそう答えるアリア……。

 あきさんと呼ばれたその子、そのままこちらに向かって走りだして。アリアに抱きついた。
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