一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 「……私とお兄様ね、高校まで公立の学校だったの」
「多賀見製薬の令嬢なら、prep schoolで良かったんじゃないか?」
「その、多賀見の娘だからよ」
「え?」

 ネイトの足元にも及ばないが、私もお金持ちのはしくれの娘である。
 自分は上級国民、と根拠のない優越感を持っている人たちを沢山見てきた。

「私とお兄様は、お父様から繰り返し言われていた言葉があるの」

『フランス語にノブレス・オブリージュという言葉があってね。日本語に訳すと、高貴なる者の義務といったところかな』

 小さい頃から子守唄のように聞いていた。

『玲奈。お父様はみんなより、ちょっぴりお金持ちなんだ。その分、みんなを幸せにする義務があるんだよ』

 首を傾げた私にお父様は微笑んでくれた。

『大人になったらわかるよ、自分のなすべきことがね』

 今ならわかる、気がする。
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