一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「僕が先に出る。体が冷えたろう? 服を持ってくるからシャワーを浴びているといい」

 素直に私が熱めのシャワーを浴びていると、ジーンズを履いただけのネイトが服を持ってきてくれた。
 着替えた私をネイトは抱き上げ、ソファにそのまま座ってしまう。

 ……あの。
 私にはしっかり外に行くような格好をさせたくせ、なぜ貴方は上半身裸なの。

 おまけに私、腰を抱き寄せられて、彼の胸に密着させられている。
 ネイトの肌は温かくて、心臓の音が聞こえて安心する、んだけど。
 私は頭から毛布をすっぽり被せられている。
 これ、服を着る意味あったの?

 息苦しくてむずかってしまった。

「可哀想に、玲奈。怖い夢を見たんだね。熱いシャワーで気は紛れたかな。もう寝れる? まだ眠りたくはない?」
「ネイト?」

 彼はわざと普通の音量で話し出した。

 いきなりどうしたの。
 毛布の中から問うように視線を合わせれば、し……というジェスチャーをされる。
 盗聴されているから、当たり障りのないことをしゃべれという意味かな。

「ん? そうか。じゃあ眠くなるまでおしゃべりしてようか」
 
 …… ネイトの意図に乗ってみるしかない。

 彼の声に密やかな緊張感があるけど、私たちのように音に敏感じゃないと聴き取れないだろう。
 でも私は彼ほどに演技はできないから、きっと強張ってしまう。

 そうか。
 だから怖い夢を見た設定にしてくれたのね。
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