一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「……ええ」
「玲奈は結婚したらどこに住みたい?」

 ええと。
 なんて答えれば、合格なの。
 と、いうよりはネイトの言葉が唐突すぎて、考えられない。

「玲奈の英語は問題ないし、アメリカに来てほしい」

 私の肩を抱き寄せ、待ち遠しくてたまらないという声のネイトに、そうしてもいいかななんて思う。
 けど。
 私、アメリカに行ってなにするの?
 ネイトの奥さん?
 クロフォードの薬を売るの?

 違う。
 
「僕が後ろ盾になれば、多賀見の薬を世界中に販売することが出来る」

 私のとまどいを察したように、ネイトから悪魔のささやきが。
 いつのまにか彼の肩を見つめていた視線を、ネイトの瞳に合わせる。

 彼は私をじっと見ていて、ぬっと携帯をつきつけてきた。
 画面には『It's a hypothetical story(仮定の話)』と書いてある。
 ……そうなの?

 ここは怒るところ?
 ムッとした顔をすれば、指を横に振られる。
 それとも、同意すればいいのかな?
 唇の両端を指で上げてニコっと笑ってみれば、サムズアップされた。 

「そうね」

 言いながら私は、ふるふると頭を横に振った。
< 126 / 224 >

この作品をシェア

pagetop