一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
　……自主的に毛布を被りなおした私に、ネイトが幸せそうに笑う。

「その3改め。多賀見にクロスブレイドの日本販売を任せるつもりでいる。僕としては、合併を申し出てもいい」

　お父様達以外の役員は小躍りしそう。

　クロフォードの代理店は各国で争奪戦と聞く。
　ネイトは優雅に選べる立場だ。
　クロスブレイドが販売が認可されたときの、日本企業のフィーバーぶりったらなかった。

　多賀見は『安全で効果のある薬を目指す。自社の薬を過不足なく患者様に届ける』という責任の見地から、立候補しなかった。
　けれど、あのときは異業種企業も入札に参加したみたい。

　クロスブレイドが本当にシロ判定されるのはこれからだけど。データ自体が捏造だったし、各国での実績もあるから心配していない。

「玲奈のパパに提案する。多賀見製薬がどういう未来を築きたいかだから、パパの判断に委ねるよ」

「……合併はわからないけど。代理店契約をお兄様が了承し、お父様が受諾すれば。そのお礼を兼ねて、お兄様が自分の持ち株を差し出したってことにすれば」

　お兄様は、恋人の治療薬を開発したクロフォードへの感謝と費用代わりにと、誰の承認も得ずに株の譲渡してしまったことを責められない。
　エリスさんの周囲も騒がせずにすむ。

　多賀見の特別待遇を不満に思う企業にも、株券が特約代理店を独占する担保代わりと見なしてもらえるはず。
　保証金より大きな枷だから多賀見の覚悟とも見れるし、代理店になりたかった他の企業は二の足を踏む。
　自己資金が豊かな多賀見からだとも思ってもらえるはず。
　お兄様の私財分だし、敵対TOBじゃないとわかれば株主は安心し、結果として株価の乱高下は免れるだろう。

　という筋書き。
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