一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 うーんと伸びをしながら私は庭に向かう。

「いたいた、ひかるちゃぁーん」

 お目当ての従姉に声をかけた。

「玲奈ちゃん、お帰りー」
「ただいまー」
 
 いつでもニコニコと出迎えてくれるひかるちゃんは、私の癒しです。

 シャクシャクといいリズムで鋏を使っている彼女は多賀見家の専属庭師。
 彼女は現代の灰かぶり?
 ううん、違う。
『将来の人間国宝』との呼び名も高い、名庭師である叔父様の血をばっちり引いていて、ひかるちゃん自身も凄腕さんなのだ。

 お父様も叔父様も。
『宝石』と称される我が家の庭を、生半可な職人さんに任せたくない。
 けれど、愛する家族が憩う家に不審者を入れたくない。

 二人の過保護過ぎる家族への溺愛と見事な審美眼が一致した結果、身許も技術も確かなひかるちゃんが専属として任命された。

 勿論彼女も、叔父様やお父様の溺愛対象でもあるので、庭の世話をしてもらいつつ、我が家に隠されている。

 静と動。
 おっとりさんなひかるちゃんと、負けん気だけで生きているような私。
 水と油みたいなものだからケンカもするけど、私たちは姉妹のように仲がいい。
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