一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「そういえば、僕の()コンシェルジュのことだが」

 ネイトが今までより温度が低い声で話し始めると、空気が引き締まるのがさすがだ。

病気がちで僕の専属を辞退した(・・・・・・・・・・・・・・)。セキュリティスタッフが見舞った(・・・・)ら、逆に彼から僕へのプレゼントを託されたそうだ」

 言い方。
 報告によると、二年分のデータは宿泊客ごとにフォルダ分けさせられ、音声はおろか映像もあった。
 セキュリティスタッフがバックアップごと、全てのデータを破壊したらしい。

 ほ、一安心。

 コンシェルジュは『漏洩するつもりはなかった』と弁明したという。
 それはそうだろう。
 室内の映像を流出したら、自分が関わっていたことがバレてしまうもの。
 でも彼はあくまで、宿泊客の好みを知ろうとして『学習のために記録していた』のだと主張したらしい。

 ネイトのスタッフがホテルの支配人にさりげなく聞いたら、コンシェルジュの仕事ぶりについて絶賛の嵐だったという。
 宿泊客から寄せられたメッセージも高評価だった。

 たしかにネイト以前の宿泊者の映像は漏洩してはおらず、私たちの画像が流出したのも地下駐車場までだった。
 けれど、白日の下に晒されなかったとはいえ、赦される範囲を越えている。
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