一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「その4。玲奈が僕のスウィートに泊まり込んでいたのは、彼女の安全確保及び機密漏洩を防ぐためだ。周知の事実で、元コンシェルジュも証言している(・・・・・・・・・・・・・・・)

 ん?
 彼の処遇について言及すると思ってた。

「Dead men tell no tales」
 
 スタッフがいい笑顔で言った。
 お見舞い(・・・・)のとき脅すとか、マイナス材料が残りそうなことはしなかったと思う。
 きっとコンシェルジュが何回生まれ変わっても払えない、けれど罪の大きさにクロフォードの株価や規模を乗算した、妥当な額の賠償金を提示しただけ。
 ……数千万ドル、もしかしたら何億ドル単位だったのかな。

 知リタクナイ。

「つまり、私たちの間はなにもないって世間には嘘を言うってこと?」
「玲奈」

 気づかうような表情でネイトが私の頬に触れてくる。
 あ。
 つい、つぶやいてしまった。
 寂しそうな声になっちゃったかな。
 ネイトの立場は理解したつもりだったから、顔に出さないようにしていたんだけど。

 額に額をコツリと合わせて、目を見つめられる。
 唇すれすれにささやかれた。

「わかってる」
「玲奈。愛してるよ」

 あっ愛ぃぃーっ。
 絶対、仕事中には出ないセリフーっ!

「わっ、私達は対応策を協議中であって、恋人のようなふるまいは!」

 周りを見るとスタッフは無表情。
 けれど今のネイトの言葉は日本語だったのに、完全に理解してるっぽい。
 くすん。
 どうせ、私一人だけが恥ずかしいのよ。
 ……は!
 お兄様はっ。
 画面をにらめば、なまあたたかい目。
 それでも助けを乞えば。

『慣れろ』
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