一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「ミズ・ヴューラーはどのブランドだと言っていた? 色は?」

 ネイトはスタイリストに尋ね、似たような系統のドレスを除くよう指示している。

 赤、オレンジ、緑、青、紫。
 形もプリンセスラインやベルラインこそないものの。ミニやエンパイアスタイル、マーメイドにスレンダー。
 どれも素敵で選べない。

「お嬢様のプロポーションですと、どんなドレスも着こなせますので、おすすめに迷ってしまいますわね。まずは、こちらのAラインのものはいかがでしょう」

 スタイリストが私に服をあてながら、なぜかネイトにうかがいを立てる。
 スーツの時とは違うスタッフだけど、お財布の主が誰か熟知している。
 ネイトは首を振った。

「では、こちらのマーメイドラインはいかがでしょうか? お嬢様の背の高さを活かすのにぴったりのデザインですわ。あえて高さのあるヒールをお履きになられますと、トレーンがエレガントでございます」

 これにも、ネイトが首を振る。たしかに裾踏んじゃいそう。
 日舞のときに、おはしょりを作らずに裾を引きながら踊ったら踏んづけてしまったことを、思い出した。
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