一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「これを」

 ネイトがハンガーから、紫紺のドレスを取り出した。

「こちらは、サテンの光沢のあるアンダードレスに、同色のシフォンのトップドレスを重ねました。透け感のあるトップから、アンダーを垣間見せるデザインです」

 裾がアシンメトリーになっている以外は、スタンダードっぽいデザイン。
 シックで、緊張せずに済みそう。

 私の顔で気に入ったとわかったのだろう。スタイリストがにっこり微笑んだ。

「トップドレスの裾はアシンメトリーのデザインで、正面はアンダードレスを覆うくらいの長さです。サイドがレースと同じくらいの長さで、バックはお嬢様のお背丈ですと、ふくらはぎくらいになります」

 アンダーは膝丈くらい。……なら、いいかな。
 ミニって座るときに上がってきちゃうから、態度がぎごちなくなる。

「二〇cm幅のスミレ色のレースを肩で留めました。裾をそのまま前身頃と後ろ身頃に垂らしております。ご覧のように両サイドに使われており、どちらかというとプレーンな上半身にインパクトを与えています」

「足首まで届きそうですね」 

「縫い付けられた真珠とあいまって、ヒラヒラとした動きがとても美しいんです。このレースはショートスリーブも兼ねています」

 歩いているところを想像した。
 動きにしたがい、レースがまるで天女の羽衣みたいに舞う。
 パールはわざと目立たないようにしているせいか、グレーっぽいものが多い。その中に、オフホワイト系のパールがちらちらと。
 模造なんだろうけど、奥深い艶が上品。

「綺麗……」

 うっとりとつぶやいたら、ネイトが決まりだなと満足げにうなずいた。
 スタイリストがドレスの背中側を見せてくれた。

「っ」
 
 裾から背中部分に目をあげて、息を呑んだ。
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