一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 気がつけば、車の中。

「玲奈? 疲れたか?」

 ネイトが気遣わしげに私を見つめていた。

「疲れてない、大丈夫じゃないだけ」

 私の言葉にネイトはますます心配そうな顔になった。
 彼が車内電話を握りしめたところで、私は慌てて付け足した。

「貴方が素敵過ぎて、脳がオーバーヒートしただけよ」

 ようやく言語機能が回復して、それだけ言えた。
 私の言葉を理解したのか、ネイトが破顔した。
 普段、整い過ぎていて冷たく感じる美貌だけど、彼の少年のような笑顔がほんと、好き。

「笑いごとじゃないわ。ネイトが王子様みたいにカッコいいから胸が苦しいの。動悸がおさまらないし、頭に血がのぼっちゃってる。素敵すぎて、死んじゃうかもしれない」

 私が言い募るほど、楽しそうな表情をしてくれる。
 うん。
 そばにいて、一生この人を笑わせたい。

「僕に見惚れるたびに玲奈は死ぬのか? ……ならば、王子が口づけを与えれば姫君は目覚めるかな?」

 思わせぶりな言葉と共に、ブルートパーズの瞳が黒くかげる。

「そんなことされたら、一回で心臓発作だわ」

 私の言葉に、ネイトがとうとう吹き出した。
 しばらく、くっく……と体を折り曲げて、震わせていたあと。
 
「僕の玲奈から褒めて頂けるとは、頑張った甲斐があったよ」

 座ったまま、優雅に騎士のような礼をしてみせる。
 おどけてくれる仕草も、可愛いくて仕方ない。
 ふふ。
 私が愛おしくてネイトをみつめていたら、彼はふいに真顔になった。

「ああ、もうっ!」

 荒々しく言うと、私のあごをつかんで口づけてきた。
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