一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 私がキョトンとしていたのだろう。

「そんなに可愛い顔されたら、止まらなくなる」

 ぶいとそっぽを向いた彼の耳にささっているのは、パールのピアス。
 台座は私のアクセサリーと同じく金。

「……あれ」

 よく見れば、ジャケットのラペルと呼ばれる朱子織りの襟の部分は、私のアンダードレスと同じ紫紺。
 ということは、『襟とお腹に巻くカマーバンドは合わせるとよい』と言われているから、たぶん同じく。
 私の太ももに、ぴったりと寄り添っている彼の足を見た。
 タキシードのスラックスには、側面にシルクのラインが一本入っている。このラインを、側章(そくしょう)と言うらしいのだけど。

「やっぱり……」

 同じ色!
 いつのまに。
 ではなくて!

「こんなあからさまなペアルック、バレちゃうじゃない」

 文句を言いつつ、顔がニコニコしてしまう。

 ……あれ。
 レンタルって、宝石だけだったよね? 
 加工料追加されちゃう!
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