一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
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 そう。
 セキュリティチームがいったん退室する際、一人が振り返った。

「Miss. As a tip, it's a good idea to keep the ring in a safe except for weddings.
(ミス。忠告だが、その指輪は結婚式以外は金庫に入れておくといい)」

 私は首をかしげた。

「why?(なぜ)」

 アンティークで、歴史的価値があるから?

「Because it's pure gold, it's going to be a fortune
(純金だからな、ひと財産になるから狙われるぞ)」

 じ ゅ ん き ん
 ナニソレ、オイシイノ?

 そして私は、全ての発端になった指輪のことを聞かされた。

 江戸時代よりも昔から、ヴューラー家の長子が婚姻の際、妻の指に嵌めた由緒正しき指輪。
 代替わりすると、また長子の妻に引き継がれ……、云々かんぬんをすっとばして、私は薬指に嵌められたモノを凝視していた。

 じ ゅ ん き ん

「純金? いやぁー、取ってぇ! 返すっ」
「玲奈!」

 世界中ならいるかもしれないけど、私の周りでは指輪まるごと、おまけにぶらさげてるチェーンまで純金だと思う人はいないのよ!
 歴史的価値もそうだし、純金イコール二四金イコール一g六四五四円!
 本日の相場だけど、あしたならもっと値上がりしてるかもしれない。
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