一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 駐車場で、車の中。

 音楽堂で、立ち会い人の前で本命にチケットを差し出すのが告白の流儀。
 受け取ってくれれば両思い。
 ただし、公演見たさに受け取る輩もいるので、チケットを受け取った人は、別れてから最低でも一か月は別の人からチケットを受け取ってはいけない。

 バレなければ……と思うが、それは難しい。
 どんな公演でも、絶対に学内の一人や二人は見ているし、B席とはいえ学生だった私たちの精一杯。
 一か月以内に別の相手から受け取った人は、オーケストラから外される暗黙のペナルティがあった。


 懐かしく言えば、「へえ?」と剣呑な声がする。
 ん?
 見上げれば、目を細めてネイトが私を見下ろしていた。
 ……これ、不機嫌な表情?

「ネイト、どうしたの?」
「君も好きな男を誘った?」
 
 ネイトのブルートパーズの目の色、濃くなっている。

 ぎく。
 実は、三年のとき四年だったコンサートマスターの先輩に決死の想いでチケットを渡して、先輩が卒業するまで付き合った。

 過去の思い出だし、今はネイトが好きだし。自白しよう。
 私は覚悟を決めた。
 
「怒らないでね。白状しちゃうとデート費用、私が出してたの」
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