一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 最近では、半分以上の人が古楽器であるストラドより新しい制作年代の楽器を選んだという実験結果も公表されているけど。
 私自身、新楽器を選んじゃうかもしれないけど。

 そ ん な こ と、ど う だ っ て い い。

 一生に一度でいいから、この手にストラディバリウスを持って演奏してみたいと願っているのは、私だけではないはず。

 例えば、一億円相当の金塊に触ってみたいという願いを、もっと強烈にしたもの。

 見果てぬ夢、叶わない恋。

「なんで、ストラドがここに?」
 
 現存しているストラディバリウスのヴァイオリンは約五〇〇挺。
 個人所有以外は、美術館蔵であったり保存委員会が管理していて、貸し出しには煩多な手続きが必要なはず。
 でも、彼ならやりかねない。 

 ネイトが腕時計を見た。

「あと五三分」

 っ、いけない!
 どれだけのお金やコネを使ったのかと問いただしたり、無駄使い!と怒るのはあと。
 ……私にとって天文学的な数字であることは予想つくので、怖くて訊けない。
 他の人にとって無駄であっても、私には必要なこと。
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