一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「玲奈が日本にいたいなら、いればいい。僕に守らなければならないものがあるように、君にも譲れないものがあるのを理解している」

 ズキリ。
 やっぱり、ネイトが日本に住むという選択肢はないんだわ。
 寂しいのは私だけ、か。
 この飛行機で成田まで同乗して、見送れということなんだろう。
 遠距離恋愛決定か……。覚悟しかけたら。

「僕が君に会いに行く」

 彼を、まじまじと見てしまった。
 これは……、私が見ている都合のいい夢?

 答えられずにいたら、ネイトが言いつのってきた。

「アメリカからだって、ヨーロッパからだってアフリカからだって! 君が逢いたいといってくれれば、僕はいつでも飛んでいく。今回のフライトは、君にも地球は狭いんだってことを体感して欲しかったんだ!」

 幸福が体中に満ちてくる。

「……だからといって。事前に話もせず、許可もなく私を連れ出すのは、誘拐や拉致と変わらないわ」

 私が優しく言えば。

「本当は朝食の時に言うはずだったんだ。なのに、フライトの許可が早まってしまった」
「……言う時間はあったでしょう?」

 私達、再会してからほぼ一週間、朝起きてから寝るまで。ううん、ベッドも共にしてるのに。

 あっけにとられた私から、ネイトは目を逸した。
 そっぽを向いた彼が情けない表情なのに、愛おしくてたまらない。

 大事なことに気づいた。

「私、パスポート持ってない!」

 それにヴィザはどうするの? 密入国で強制送還コースじゃなかろうか。

「ヘルガのコンサートの際、君のご両親から預かってる。ヴィザは問題ない」 

 私の表情を読んだネイトが説明してくれる。

「……なんで。そこまで周到なのに」

 私の視線に耐えかねたようにネイトが顔を覆う。
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