一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
壁ドンからの庭園での…
だんっ!
ネイトが手をついたときに壁が激しく鳴った。
「説明してくれるかな、僕の愛おしい人。なんで僕が行ったことのない多賀見邸に、あのミスター隠岐が頻繁に出入りしてるのかな?」
普段はブルートパーズのような目がどす黒く、細められている。
なのに口元は笑みを浮かべてる。
データ上、最大限に機嫌が悪い!
「よ、く知ってるのネ……?」
にいいっこり、と音がしそうな勢いでネイトが表情筋を動かす。
「know your enemy,know thyself,and you shall not fear a hundred battles
(敵を知り己を知れば百戦危うからず)
ってことわざ、日本にあるだろう?」
使い方が違うような気もするし、そもそも日本の故事ではない。
「答えてもらおう。なぜ、ミスター隠岐が君の家に行ってる? 奴は『多賀見の令嬢と結婚する』と宣言しているらしいが」
うわぁお、隠岐さん情熱的!ではなく。
目の前の危機をなんとかしなくちゃ。
仕方ない。
お箸の国の人の恥ずかしがりモード、解除。
彼の頬に手を添えて、ギラギラした光を放つ双眸をのぞきこむ。
彼の手が私の手を握り、唇まで運んでいく。
カリ、と指を噛まれた。
「マイ・ダーリン。『妹が二人いる』と、お兄様から聞いたことない?」
あのお兄様なら、ぜったいひかるちゃんのことも妹だと公言しているはずだ。
ネイトの放つプラズマが少しおさまる。
「……ミスひかる、だったか? ダイジュ・ミツモリの娘の」
「そうよ。元々、隠岐さんはひかるちゃんに庭師としてのオファーをしてきていたの」
そこで恋仲になったと言ってもなぁ。
うん、隠し事はしない。
私が多賀見プレゼンツひかるちゃんお見合い大作戦をきかせると、はぁぁ……と大きなため息をつかれた。
「……君達は、なんというGrobe Technikを」
ん?
ドイツ語かな、知らない単語。
英語ではRough techniqueと言うらしい。
知らない。
二人で電子辞書を調べて、日本語で『荒技』と知った。
「彼がミスひかるに恋したからいいものの、君との結婚を強要してきたらどうするつもりだったんだ」
「もちろん、『愛する夫がいるので無理です』って断るわ」
にっこり微笑んでみせれば、ネイトが脱力したように私に縋ってきた。
翌日。
ひかるちゃんに隠岐さんと遠くでデートしてもらっている隙に、ネイトは私の実家への初訪問を果たした。
我が家の『宝石』と称され、ひかるちゃんが手入れしてくれている庭へ案内すると。
「fantastic!」
「Du siehst fantastisch aus」
を繰り返し叫んでたから、よほどお気に召したらしい。
「Ich möchte es Helga zeigen.
(ヘルガにも見せたい)
Frau Hikarus Technik ist wunderbar!
(ひかる嬢の腕は素晴らしいな!)」
大絶賛の嵐に、なぜか私が鼻高々だった。
でも。
「ネイト、ひかるちゃんを好きになっちゃ駄目だからね?」
私が彼の袖を引っ張って小声で言ったら、にっこり微笑んだ。
「大丈夫だ、愛おしい人。君以外、僕の目には映らない」
ね、ネイトってば日本語上手になったのね。
「ん……」
木に追い詰められて、キスされたのだった。
「あ、ネイト……」
「玲奈、愛してるよ」
キスが段々深くなり、立っているのが難しくなる。
彼が力強く支えてくれる。
ここがどこだとか。
家族がなかなか戻ってこない私達をどう考えているかとか。
ネイトの熱い唇や手に翻弄されているうち、どうでもよくなる。
私達がいつ部屋に戻ったかは、月と庭が知っている。
ネイトが手をついたときに壁が激しく鳴った。
「説明してくれるかな、僕の愛おしい人。なんで僕が行ったことのない多賀見邸に、あのミスター隠岐が頻繁に出入りしてるのかな?」
普段はブルートパーズのような目がどす黒く、細められている。
なのに口元は笑みを浮かべてる。
データ上、最大限に機嫌が悪い!
「よ、く知ってるのネ……?」
にいいっこり、と音がしそうな勢いでネイトが表情筋を動かす。
「know your enemy,know thyself,and you shall not fear a hundred battles
(敵を知り己を知れば百戦危うからず)
ってことわざ、日本にあるだろう?」
使い方が違うような気もするし、そもそも日本の故事ではない。
「答えてもらおう。なぜ、ミスター隠岐が君の家に行ってる? 奴は『多賀見の令嬢と結婚する』と宣言しているらしいが」
うわぁお、隠岐さん情熱的!ではなく。
目の前の危機をなんとかしなくちゃ。
仕方ない。
お箸の国の人の恥ずかしがりモード、解除。
彼の頬に手を添えて、ギラギラした光を放つ双眸をのぞきこむ。
彼の手が私の手を握り、唇まで運んでいく。
カリ、と指を噛まれた。
「マイ・ダーリン。『妹が二人いる』と、お兄様から聞いたことない?」
あのお兄様なら、ぜったいひかるちゃんのことも妹だと公言しているはずだ。
ネイトの放つプラズマが少しおさまる。
「……ミスひかる、だったか? ダイジュ・ミツモリの娘の」
「そうよ。元々、隠岐さんはひかるちゃんに庭師としてのオファーをしてきていたの」
そこで恋仲になったと言ってもなぁ。
うん、隠し事はしない。
私が多賀見プレゼンツひかるちゃんお見合い大作戦をきかせると、はぁぁ……と大きなため息をつかれた。
「……君達は、なんというGrobe Technikを」
ん?
ドイツ語かな、知らない単語。
英語ではRough techniqueと言うらしい。
知らない。
二人で電子辞書を調べて、日本語で『荒技』と知った。
「彼がミスひかるに恋したからいいものの、君との結婚を強要してきたらどうするつもりだったんだ」
「もちろん、『愛する夫がいるので無理です』って断るわ」
にっこり微笑んでみせれば、ネイトが脱力したように私に縋ってきた。
翌日。
ひかるちゃんに隠岐さんと遠くでデートしてもらっている隙に、ネイトは私の実家への初訪問を果たした。
我が家の『宝石』と称され、ひかるちゃんが手入れしてくれている庭へ案内すると。
「fantastic!」
「Du siehst fantastisch aus」
を繰り返し叫んでたから、よほどお気に召したらしい。
「Ich möchte es Helga zeigen.
(ヘルガにも見せたい)
Frau Hikarus Technik ist wunderbar!
(ひかる嬢の腕は素晴らしいな!)」
大絶賛の嵐に、なぜか私が鼻高々だった。
でも。
「ネイト、ひかるちゃんを好きになっちゃ駄目だからね?」
私が彼の袖を引っ張って小声で言ったら、にっこり微笑んだ。
「大丈夫だ、愛おしい人。君以外、僕の目には映らない」
ね、ネイトってば日本語上手になったのね。
「ん……」
木に追い詰められて、キスされたのだった。
「あ、ネイト……」
「玲奈、愛してるよ」
キスが段々深くなり、立っているのが難しくなる。
彼が力強く支えてくれる。
ここがどこだとか。
家族がなかなか戻ってこない私達をどう考えているかとか。
ネイトの熱い唇や手に翻弄されているうち、どうでもよくなる。
私達がいつ部屋に戻ったかは、月と庭が知っている。