一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
彼の手のひら。
コロンの匂い。
体の厚み、逞しさ。
私のではなく、彼の早い心音。
私のなかに刻みつけられてしまった彼のリズム。
繰り返し思い出していたネイトと、重なる。
理性はあっさりと感情に私を譲ってしまう。
情けないけどうっとりしていたら、静かなくせ峻烈な響きを持つ声が頭に降り注いだ。
「僕と結婚するか、親の会社を僕に買収されるか。好きなほうを選べ」
「……は?」
なにを言ってるの、この人。
顔を見ようにも、首の付け根あたりと腰にがっちりと彼の手が絡みついていて体を離せない。
彼の硬い胸に頬を押し付けられている。
「離して!」
叫んでみたら、ますます強く囚われてしまった。
まずい。
このままじゃ私の顔拓が、彼の高級そうなスーツについちゃう!
「逃がさないよ、玲奈」
酷薄な声なのに、私の耳は勝手に淫蕩な響きを聴き取ろうとする。節操ない背骨に、ゾクリとしたものがはしる。
「逃げないから離して。ネイトのスーツが汚れちゃう」
渋々言えば、さらにきつく抱きしめられる。
なぜ。
疑問に思いつつ、ネイトの腕の中は気持ち良すぎる。
彼の背中に回したくなる手を握りこんで、こらえる。
いつのまにかネイトの呼吸も落ちつき、私たちはまったりしはじめていた。
…………ん?
さっき。
お父様、ネイトをクロフォードって呼んだ?
その苗字で、製薬会社の社長室にアポイントなしで突然訪れることが許される人物。
私が知ってるのは、クロフォード製剤インターナショナルのCEOだけなんだけど。
コロンの匂い。
体の厚み、逞しさ。
私のではなく、彼の早い心音。
私のなかに刻みつけられてしまった彼のリズム。
繰り返し思い出していたネイトと、重なる。
理性はあっさりと感情に私を譲ってしまう。
情けないけどうっとりしていたら、静かなくせ峻烈な響きを持つ声が頭に降り注いだ。
「僕と結婚するか、親の会社を僕に買収されるか。好きなほうを選べ」
「……は?」
なにを言ってるの、この人。
顔を見ようにも、首の付け根あたりと腰にがっちりと彼の手が絡みついていて体を離せない。
彼の硬い胸に頬を押し付けられている。
「離して!」
叫んでみたら、ますます強く囚われてしまった。
まずい。
このままじゃ私の顔拓が、彼の高級そうなスーツについちゃう!
「逃がさないよ、玲奈」
酷薄な声なのに、私の耳は勝手に淫蕩な響きを聴き取ろうとする。節操ない背骨に、ゾクリとしたものがはしる。
「逃げないから離して。ネイトのスーツが汚れちゃう」
渋々言えば、さらにきつく抱きしめられる。
なぜ。
疑問に思いつつ、ネイトの腕の中は気持ち良すぎる。
彼の背中に回したくなる手を握りこんで、こらえる。
いつのまにかネイトの呼吸も落ちつき、私たちはまったりしはじめていた。
…………ん?
さっき。
お父様、ネイトをクロフォードって呼んだ?
その苗字で、製薬会社の社長室にアポイントなしで突然訪れることが許される人物。
私が知ってるのは、クロフォード製剤インターナショナルのCEOだけなんだけど。