一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 腕が緩んだので体を離して、まじまじと見た。
 引き寄せられそうになったけど、私が一定の距離以上離れる気がないのがわかったせいか、腰に手を添えられている程度。
 
 んー……。
 ネイトは無精髭で顎が金色だったし、髪があっちこっちにはねていたし、ピアスをしていた。

 見るからにエグゼティブなこの人は、髭もあたっているし、ネイトと同じところにピアスホールがあるけれど、なにも付けていない。
 見れば見るほどそっくりだけど。 指環のことをネイトから聞いた別人、だよね?
 
 ではなぜ、ネイトとそんな偉い人が知り合いなのか。
 どうしてここまで二人が似ているのかが知りたい。
 まさか双子?
 だとするとネイトも、クロフォードに連なってるってこと?
 私は否定してもらいたくて質問してみた。
 
「ネイト。貴方の名前は、ミスター・ウイリアム・クロフォードというのですか……?」

「やはり知っていたか」

 憎々しげに歪んだ顔。
 知らなかったし、やはりってことはネイト本人? 他人の空似だと、いちるの望みをかけてたんだけど。偽名だったんだ……。

 ネイトは私に名乗るつもりがなかった。
 自分に言い聞かせていたけれど。
 あらためて思い知らされた事実に、ショックが大き過ぎてリアクションを取れない。
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