一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「娘が取り返しのつかないことをしたなら、親としてお詫びをしなければならない。私が社長職を離れ、多賀見製薬をミスター・クロフォードにお譲りするのも、やぶさかではない」

「賢明だな」
「お父様っ」

 勝ち誇ったネイトと私の悲鳴じみた声が重なる。
 まさか、そんな。
 私のせいで、お兄様が継ぐべき多賀見製薬を。
 私の甥っ子や姪っ子、そのまた子供たちが受けとり、守っていくべき会社をネイトに奪われてしまうの?

 お父様が苦虫を噛んだような顔になった。

「……、が。なにがあったのか知りたくもないが、当事者同士で話し合えないとは、二人とも幼すぎる」

 ん?

「……お、父、様?」

 あれ、なにか雲行きが変わってない?
 ネイトも目をぱちくりしている。
 はああ……とため息をつきながら、なぜかお父様は天を仰いだ。

「世界的企業のCEOが血相変えて飛び込んできて、英語でまくしたててきたと思ったら、そういうことか……」

 どういうこと?

「残念ですがミスター、話になりませんな」

 やれやれという表情のお父様を、ネイトがにらみつける。

「会社を担う人間が言葉を覆すつもりか!」

「私の話を聞いておられたかな。尻に殻をつけたひよっこ達のとばっちりで、患者様を見捨てる訳にはいかないし、社員を路頭に迷わせられないと申し上げている」

 ……なんか。ネイトと私、二人まとめて叱られている?
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