一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
昨年、本社専務となったとき、お兄様はお父様から株を購入した。
割合にして全株の二%。
ホテルのスタッフに訊ねれば、私の身元はすぐにわかったはず。
クロフォードなら。
昨日ううん、私がホテルを出てから数時間のうちに、彼は指輪を取り返せただろう。
そうしなかったのは、私とお父様の喉元に刃を突きつけるために、多賀見の株の買い付けの準備をしていたから。
お父様の体がぐらりと傾いだ。
「お父様っ」
駆け寄ろうにもネイトは腕を緩めてくれない。
お父様はなんとか、こらえた。
「……例え、辞任に追い込まれても」
お父様の、動揺を一瞬のうちに消し去った表情に安心する。
「娘を政略の道具に使うつもりはない。ミスター、貴方と玲奈の婚姻について、恋愛感情以外での結びつきは認めない。それに私は息子を信じている。穣には、わが社の株を手放さねばならない事情があったはずだ」
私はお父様の言葉にハッとなった。
そうだ。
『多賀見を守ることは、社員を守ること。ユーザーの生命を守ること。薬草が育つ土地を守ることだ』
常々、そう言っていたお兄様が、利益に目がくらんで自社株を売るなんてありえない。
アメリカ支社に出向しているお兄様に、なにかあったのだ。
私はネイトの襟を掴んだ。
「彼は無事なの? 私を罰するために、兄や会社を陥れるのは許さない!」
父の言葉を聞いて。
そして、彼をにらみつける私を見て、ネイトの目がなぜか柔らかくなった気がした。
割合にして全株の二%。
ホテルのスタッフに訊ねれば、私の身元はすぐにわかったはず。
クロフォードなら。
昨日ううん、私がホテルを出てから数時間のうちに、彼は指輪を取り返せただろう。
そうしなかったのは、私とお父様の喉元に刃を突きつけるために、多賀見の株の買い付けの準備をしていたから。
お父様の体がぐらりと傾いだ。
「お父様っ」
駆け寄ろうにもネイトは腕を緩めてくれない。
お父様はなんとか、こらえた。
「……例え、辞任に追い込まれても」
お父様の、動揺を一瞬のうちに消し去った表情に安心する。
「娘を政略の道具に使うつもりはない。ミスター、貴方と玲奈の婚姻について、恋愛感情以外での結びつきは認めない。それに私は息子を信じている。穣には、わが社の株を手放さねばならない事情があったはずだ」
私はお父様の言葉にハッとなった。
そうだ。
『多賀見を守ることは、社員を守ること。ユーザーの生命を守ること。薬草が育つ土地を守ることだ』
常々、そう言っていたお兄様が、利益に目がくらんで自社株を売るなんてありえない。
アメリカ支社に出向しているお兄様に、なにかあったのだ。
私はネイトの襟を掴んだ。
「彼は無事なの? 私を罰するために、兄や会社を陥れるのは許さない!」
父の言葉を聞いて。
そして、彼をにらみつける私を見て、ネイトの目がなぜか柔らかくなった気がした。