一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「穣はね」
「え?」

「彼の恋人が難病で入院中なんだ。まだ人類はその病気を克服出来ていないが、わが社は有効な薬を開発した。非常に高価だけどね」

 高額薬というものがあって、販売価格が数千万になるものもある。
 けれど、いくら効果が認められるからって、そんな薬を一般家庭がほいほい購入できるわけがない。 
 だから日本では高額な医療や薬に関しては、高額療養費制度というものがある。健康保険への負担増に懸念があるけれど、一筋の光明だ。
 
 この制度は収入に比例して、患者の負担の上限を、月ごとに定める制度だけど。
 それでも負担であることは間違いないし、お兄様の恋人が保険に入ってなかったとしたら……?

「貴方って人は!」
 
 怒りで目の前が、真っ赤になりそう。
 どうやってかお兄様の周辺を探って、弱みを握ることに成功したのだ。
 いくらお兄様でも、高額な医療費を払い続けることはできない。

 だからって、株はまずい。
 私財とはいえ、会社の未来を左右してしまうのだ。

 企業だって、なんの見返りもなく高額薬を無償で提供することはない。
 なんたって、一つの薬を研究・開発するのに莫大な研究費と沢山の人が関わっているのだから。
 この人のやり方は経営者として間違ってない。だからといって納得はできない。

「玲奈。君が賢ければ、最善策がわかっているはずだ」

 ネイトは無表情だった。
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