一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「穣は妹の玲奈を心底慈しんでいる。ミスターは、君の友人を信じられないか?」
「っ、家族に対しては目が曇る人間を多く見てきた」

 苦し紛れのように吐き捨てたネイトに、お父様が深い瞳を向けた。
 
「半身不随になった父上を助けるために、音楽の道を諦めた君が。難病に罹った姉君を助けようとして奔走している君が言うか?」

 お父様の言葉にネイトが固まった。
 え。
 ネイトも諦めたの。
 あんなに音楽を愛し、芸術の女神に愛されている貴方が。
 ……お兄様の恋人って、もしかしたら。

 だめだ。
 『この人に私は嫌われているのだから、私もこの人を嫌いにならなくちゃ』
 とか。
『あの夜は夢だったんだ、思い出しちゃだめ』
 とか、いい聞かせていた心が暴れ出す。

 ネイトが好きだと。
 どうしようもなく、彼にとらわれていると。
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