一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 穣は姉のエリスが具合が悪くなったところに居合せて、病院に迎えの者が行くまで付き添ってくれていた。
 翌日から穣は姉を見舞うようになった。

 はじめこそ僕は彼のことを『クロフォードに取り入りたい輩』と彼を警戒していたが。
 人懐こくて献身的、頭が良くてユーモアたっぷりな穣を、僕とエリスが好きになるのに時間はかからなかった。

 彼女は難病で長期療養が必要だ。高額薬剤を定期的に投与しなければならない。
 ベッドの上での人生を余儀なくされているが、恋人の穣は寄り添ってくれている。

『姉の治療は僕が責任を持つ。穣は違う恋人を探すがいい』

 臓器不全を起こした姉が運び込まれた、集中治療室の前で慟哭する穣。
 彼を、エリスの望みとおりに突き放そうとした。

『僕には彼女が全てだ! エリスを救えるのがクロフォードの薬しかないのなら、僕にも治療費を負担させてほしい』

 そう言って、所有する資産の運用を僕に委託する旨の書類をその場で書き上げたのだから。

 取り上げるつもりなどなかった。
 時期を見計らって返すつもりでいた。
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