一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 予想外だったのは玲奈の父親が驚愕の表情を浮かべていたこと。
『僕たちの出会いに作為はなかったのか?』
 愚かな希望をいだいてしまった。
 
 なのに、他ならぬ君が否定した。
 再会したとき君は、僕と認識したら信じられないという顔をしてみせた。
 そうだ。 
 君は僕の指輪を盗みやすいように、そそのかしさえしたのだ。

 最初から僕の指輪が目的だったのだと、あの顔を見て確信した。
 生憎だったな。
 僕が母から譲られた指輪を奪われて、敗北感からプロポーズするとでも思ったか。

 ……君が僕の指輪を、その心臓で温めてていたこと。大事そうに両手で捧げ持つように渡してくれたこと。
 言い難い衝動に駆られて抱き寄せてしまった。
 この柔らかさ。
 あのとき抱いたのはたしかに君だ。
 だが、どうして僕から身を離そうとする?
 悔しさと怒りと憎しみの表情を浮かべている玲奈。
 ああ、そうか。

 多賀見に有利な契約を締結するとでも思っていたのに、目論見が外れたからか。
 残念だったね、玲奈。
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