一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「Aschenputtel ließ ihre Schuhe fallen, Stehlen japanische Frauen Ringe?
(シンデレラは靴を落としていったが、日本人女性は指輪を盗んでいくのか)
 
 Es ist sehr modern.
(とても現代的だね)」
 
 僕の嫌味がわからなかったのか、無視することにしたのか。
 君は不機嫌な目をして黙り込んだ。
 
「…………貴方だって、ネイトっていう嘘の名前を私に教えた」
 
 エレベーターが止まる寸前、聞こえてきたのは泣くのを我慢しているような声だった。
 
 咄嗟に君を抱きしめたくなった。
 君の髪に顔を埋めて、
『嘘じゃない。僕の名前はウイリアム・ナサニエル・クロフォード。ネイトとは、親しい人にしか呼ばせない愛称なんだ!』
 弁明したくなったのを、必死に踏みとどまった。

  裏切られたあとですら、君の唇から紡がれると優しい音楽のように聞こえる僕の名前。

 騙されるな。
 玲奈はずる賢い女性だ。
 そして僕はなんと愚かな男だ。
 恋とは、こんなにも人を駄目にするのか。
 いい教訓になったよ。
 これから先、僕は罠に堕ちない。
 二度と。
 
「ミスターと呼びたまえ」
「かしこまりました、ミスター・クロフォード」
 
 僕らは車に乗り込んだ。
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