一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
彼からの問題提起
 意外だった。
 ネイト……ミスターの態度からはリムジンが横付けにされていると思っていたけれど。
 彼はタクシーに手を上げて乗り込んだ。
 私の視線に気づいたのか、「今回はお忍びでね」とだけ呟いて、あとは無言で通した。
 うん。
 確かに、TOBなんて最大機密以外、貴方には話すことなんてないんでしょう。
 
 ホテルの地下駐車場に滑り込むタクシーの中、息が苦しくなる。
 幸せな時間を過ごしたのは、たった三日前なのに。
 
 この前のように、地下から直接部屋まであがる。
 ネイトが動いたので、不覚にも体がはねた。
 わかっているくせして、ネイトは私を無視した。取り出た携帯でどこかの誰かと話し始める。
 
「僕だ。タブレットを一台用意して欲しい。……ああ、それでいい」
 
 一夜を過ごした部屋に入るまえに、息を止めた。
 目をつむって覚悟する。
 息を吸い込んでから、目を開けた。

「入りたまえ」

 まるでホラーハウスに入ったときのように、どきんどきんとうるさい心臓を抱きしめたまま、廊下を歩く。
 改めて室内を見て、目を見開く。
 応接間は簡易的なオフィスルームと化していた。
 ネイトは部屋に入るなり、いきなり切り出してきた。
 
「クロスブレイドをどう思う?」
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