一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 大学三年次までの私は『玲奈は暗黒サイドに堕ちていた』と、あの頃の友人達から未だに言われるくらいとんがっていた。
 唯一の支えだった一つ上の恋人が、彼の卒業と同時に連絡が取れなくなり、完全に心の平穏を失った。

「もうやだ。私くらいの才能の人、ゴロゴロいる。突出してないとプロになれない! もう、退学したいよ……っ」
 
 とうとう耐えきれなくなって、叔父様の造園事務所で働きはじめていたひかるちゃんにメッセージを送信した。

 私がヒステリックに返信したあと、ひかるちゃんから電話がかかってきた。

「玲奈ちゃんは、どうすれば飛び抜けることが出来ると思う?」
「それがわからないんだってば!」
「私ね、最近仕事で悩むようになったんだぁ」
「え?」

 初耳だった。
 ひかるちゃんからは『庭師として優秀な自分』発言しか聞いた事がなくて、出来るオーラが漂っていたから。
 ジャンルは違えど、アーティストの道を歩き始めていた。
 
「お父さんから『運・鈍・根』って聞いたの」 
「え、うどん粉?」
 
「成功するための三つの要素。運が良いこと、粘り強いこと、根気があることらしいんだけどね。お父さんは多賀見のお祖父様から聞いたんだって」

「お祖父様から?」
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