一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「多賀見製薬に入ろうと思うの」

 ひかるちゃんにメッセージを送った。

 作ることも処方することも出来ないけれど。
 実際に働いてみて、市販の薬がどんな効果があるのか、市場はどんな薬を求めているのかを見てきた。
 
「なんで、また?」
「私が多賀見製薬の力になれる人材とわかったから」

 調べたところ、多賀見製薬の薬は他社の同系統の薬よりも売れていた。
 四季報でも常に優良企業扱い。
 福利厚生が素晴らしいのは、言わずもがな。
 MRの裏サイトものぞいてみたけど、好意的な評判が殆どだった。

 外から見たら多賀見製薬はとても素晴らしい会社で。お爺さま達の代ううん、もっと前から精進してきた結果が今の評価。
 そしてお父様やお兄様がよりよくしようと努力している。二人を手伝いたい から、多賀見に入りたい。

「親の七光りって言われるよ?」

 ひかるちゃんにしては、意地悪な言葉だった。きっと彼女も言われたんだろうな。

「わかってる」

『プロになれるなんて、一握りの人間だけだとわかっていながら音楽を専攻した』
『あげく、就職に失敗して父親に泣きついたんだろう』
 とか、悪口を言われてる自分が想像できる。

「ひかるちゃんも覚悟して、それでも叔父様の事務所を選んだんだよね?」

「そうだね。……私達、血がつながってるんだねー」
「なにをいまさら?」
「あのね」

 ひかるちゃんもやっぱり在学中ドラッグストアで働き、叔父様の造園事務所に入る前に「登録販売者」の資格を取るべく勉強していたという。

「今も薬草のことや土壌のこと、勉強してるんだぁ」
「……私達って」

 無性におかしくなった。

「「一周回って元に戻るなんて!」」

 二人で大笑いした。
 
 お祖母様は私が多賀見に入ることを、真っ先に応援してくださったけど。
 意外に、両親のほうがオロオロしていたっけ。

「音楽家として食べていけるまで面倒見てやるから、遠慮しなくていいんだからな?」

 うん。私、愛されてる。
 
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