一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 考えてみれば、ずいぶん身軽よね?
 彼ほどの人ならボディガードも雇わないと危険ではないのかしら。
 このフロアはネイトが借りている部屋しかない。専用エレベーター一基しか止まらないから、セキュリティ上は大丈夫なんだろうけど。

 考えていたことは丸わかりだったのだろう、いったん戻ってきたネイトにノートパソコンを見ろと示された。
 グラデーションの分布図や画像など、複数の画面が映しだされている。

「君が僕と別行動することはないだろうが、この画面を確認して僕以外にいなかったら開けてもいい」

 フロア全体の熱分布図には、固まった点二つが重なるように点滅しており、少し離れたところに一つ。
 二つが……私達?
 もう一つは。

 昇降部分と思われる設計図のような画像。
 モニターにはその他に非常口、エレベーターの画面。ドア前の三画面が展開されていた。

 男性スタッフが玄関前に佇んでいる姿が映しだされている。彼は、タブレットの箱らしきパッケージを胸に抱え込んでいた。
 想像以上の警戒態勢に息を呑んでいると、ネイトの静かな声が聞こえた。

「指輪が盗まれてから導入させた」

 カッと身裡が熱くなる。
 私の感情を放り出してネイトは行ってしまった。
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