一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
「コーヒーを入れてくれないか、二人分だ。カップは君の分もある。僕はその間にセットアップしておく」

 指し示されたドアを開ければ、簡易キッチンというには立派なキッチンだった。
 IHコンロが三口もある。
 食器棚には高級そうな食器類。
 ミルクパン、フライパン、カッティングシートに、ナイフ。
 カトラリーや調味料も一通り揃っており、簡単なら自炊なら出来そう。

「下手なマンションを買うより、居心地良さそうよね……」
 
 レンジやコーヒーメーカーに、僅かに生活感があった。
 二人で料理を作っているところを想像した。
 卵を割っている私。
 殻をつまみあげるネイト。
 ネイトの顔についたクリームを取ってあげようと、舐めとる私。
 私が天袋から出そうとすると、ネイトが取ってくれる。
 彼が次になんの調味料に手を伸ばすか察して、手渡す私。

 想像の中の私達はとっても仲良しなのに。
 はああ……。
 ため息と一緒に吐き出して、換気扇に吸い取らせる。

 冷蔵庫を開ければ開封したコーヒー豆の袋はあったけれど、ミルクはない。

「ブラック派なんだ……」

 そんな些細なことでも、彼のことを知るのが嬉しい。

 豆を挽いてドリップしている間にカップを用意する。
 コーヒーを持って行くと、ネイトは既にタブレットを操作していた。
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