一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 ソファの背に無造作に投げ出されていたジャケットが目に入った。
 いったんコーヒーを書類から遠いところに置いて、ジャケットを手にとり、ハンガーにかける。
 気をつけて観察すれば、うっすらと顔択が。

 抱き寄せられた感覚を思い出して、体が熱くなる。私は慌ててランドリーの番号を確認した。
 
「不可抗力だったとはいえ、私がクリーニング費用を負担しよう」

 心の中で呟く。
 この人に借りを作りたくない。

「ここに座ってくれ」

 ネイトが自分の隣を指し示す。

 ためらってしまう。
 私がおそるおそるテーブル越し、対面の場所に座るとネイトは眉を上げて雄弁に非難してきた。

 仕方ないでしょ。
 隣に座ったら最後、貴方のことが気になって仕事にならない。
 そしらぬフリをして、カップをそれぞれの前に置いた。

 しまった。
 彼の正面に座ったら、かえってネイトの姿が目に入ってしまった。
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