一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 下着は、持っているのが怖いほどの、とろりとした手触り。
 デザインも素晴らしい。立体裁断で縫製も言わずもがな。

「これ。クリスマスやバレンタインで本命にデート誘われて、一世一代の覚悟で買うやつ……」

 ごくり。
 着てみたい。
 誘惑に負けて、私は裸になった。

「わあ……」

 鏡の中、シルクとレースで包まれた私は、とても色っぽいのに上品で、暫く見惚れてしまった。
 ターンしてみたり、髪を持ち上げて胸を突き出してみたり。
 ドレッシーな気分になり、自分がとんでもなく高級な女性になったと勘違いしてしまう。

 隠すのがもったいない。
『素敵! ね、見て。私、セクシーでしょ?』
 と、彼に自慢してる自分を想像した。
 狩人の目になったネイトが私に手を伸ばしてきて……。

「違うってば!」

 煩悩にフタをすべく、私は慌ててスーツを着こむ。

 びっくりした。
 手に持っていたときはしっかりした生地なのか、それなりの重みを感じた。
 なのに袖を通してみると、オーダーのように私の体にフィットする。
 キツいところもブカブカなところもない。
 肩も腕も胴体も窮屈さがない。
 ここまでサイズ感をぴたりと当てられると、私のために誂えたとしか思えない。

 そして、ランジェリーを身につけた誇らしさは、スーツで隠しても消えなかった。
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