一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 コツコツと扉が叩かれた。
 履き慣れたパンプスで慌てて外に出た。
 ネイトに、上から下までじっくり検分される。

「いいだろう」

 ほっとしたところに、スタッフが私の足元にひざまづく。
 私を見上げてニコリと微笑んでいる顔は男性。
 男らしい美形の顔だちでモジャモジャの黒い髪、無精髭。
 ベストにネクタイだけど、自堕落な雰囲気。
 
 なんとなくネイトを見れば、うなずかれる。
 と。
 男性が私の足を取り、口付けをしようとしてきた。

「にゃーっ!」

 変な声が出た。
 手を添えられたままの足をひったくり、男性のあごにヒットさせようとした。
 ぱし、と小気味いい音がして、すんでで止められる。

 私の足をそっと床におろすと、なんと出ていってしまった。
 不思議なことに、ネイトはなにも咎めない。
 りりり……とネイトの携帯が鳴る。
 相手の人がなにか喋っているらしく、彼は黙って聞いていた。

 
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