一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 結局、ネイトが予定していたスーツ七着分、試着させられてしまった。

 最後のスーツを着て出ていこうとしたら、入ってきたスタッフに押し止められた。
 ライトがまぶしいくらいに取り付けられ、ケープを被せられた。
 ぱたぱたとコットンに染み込ませた化粧水をはたかれ、クリームを顔中に塗り広げられる。
 
「あっあの!」

 キツい顔立ちをしてるから、フルメイクされると……!

「ご安心ください」

 メイクアップアーティストに自信たっぷりに言われた。

「嘘……、私?」

 鏡の中の私は、いつもの「喧嘩売ります買います」じゃない。
 自信に満ち溢れていて、そのくせ人懐こい表情をしていた。
 メイクのコツを教えてもらってからネイトの待つ居間に戻った。

「出会った日の君になった」

 目を細められたってことは、褒められたのかな?
 それにしても。

「こんな女性をアピールするような格好、オフィスに相応しくないわ……」

 フリルにリボン、レース。
 深いスリットの入った、ロングタイトスカート。
 ドレスコードギリギリな襟ぐりのカットソーや、体のラインに添うセーター。
 シックと見せかけて、背中が大胆にカットされたワンピース。
 好きだけど。
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