一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 スタッフに連れていかれたのは個室。
 先客がいた。
 月の光のように淡い金髪、ネイトより青く冷たいアイスブルーの瞳。
 化粧してるとしたら、ものすごいナチュラルメイクの上級者。
 肌も髪も艶々、スレンダーな体。
 薄く刻まれた年輪がより彼女に深みを与えている、年齢不詳の理知的美女。

 ……どこかで見た? 誰かに似てる。

「Nate」

 私が固まっていると、美女が愛おしいとしか言いようのない表情を浮かべ、ネイトにむかって両手を広げた。

「Helga」

 対するネイトも嬉しそうな顔で彼女に大股で、近づいていく。
 嫌だ。
 予想できる未来に目を背けたいのに、私はしっかりと二人を見つめていた。
 
 彼も彼女を優しく抱きしめた。
 やめて、胸が痛い。

「Es tut mir leid, ich habe dich nicht kontaktiert
(ごめんなさいね、連絡もせず)」

「Eine solche Überraschung ist willkommen
(こういうサプライズは大歓迎だ)」

 美女が私をちらりと見た。

「Sieht sie nicht so aus?
(彼女はそうでもなさそうよ)」

 ネイトが私を振り返る。

「Rena. Marguerite von Wurer
(玲奈。マルガレーテ・フォン・ヴューラーだ)」

 目を見開いた。

「Bist du ein globaler Pianist?
(世界的ピアニストの?)」

 私ったら、なんで気がつかないの!
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