一夜限りの恋人は敵対企業のCEO⁈【後日談有】
 嫌いよ、ネイトなんか!

 秘書としてどうとか。
 人間としてどうとか。
 ましてや多賀見製薬なんて、どうでもよくなった。

 私は相思相愛の二人の側にいたくなくて、逃げ出そうと体を反転させた。
 片足を踏み出しかけたところで、腕をがっしりと掴まれる。
 ネイトと向かい合うように体の向きを変えさせられ、頬を挟まれて無理矢理に顔を上向きにされた。

「いや……っ」

 見ないで、こんな顔。
 きっと嫉妬で歪んでる。

「玲奈。泣きそうだ」

 私を見下ろす、ネイトの目が怖いくらいに真剣だった。

「僕をはめた君がなぜ、そんな顔をしている。それに僕が君を置いていったとはどういうことだ? 『すぐ戻る』とメモには書いておいただろう」

「そんなもの、読んでないわ」

「だけど君はメモの存在に気づいていた。指輪を奪っていったんだから」
「奪ってない!」

 私がにらみつけると、ネイトは胸ポケットからクシャクシャのメモを取り出した。

 どういうこと?
 なんで、ネイトが大事そうにあの日のメモを持っているの。
 しわだらけで、ドイツ語。
 苦労しながら読んでいくうち。

 私は彼を見つめた。
 
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