【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
落胆のような声に背筋が冷える。
長らく青木先輩に助けてもらってばかりだったから、自分で対処したこともなかったのだと今更気づかされてしまった。
『……橘専務に相談したら?』
青木先輩が心配そうな顔をしていたのを思い出して、素直にそうしておけばよかったなんて、すこし思ってしまった。
「すみません。さすがに一人では……」
「そうか、じゃあ俺が手伝う」
「え、あ、渡部長が、ですか?」
「悪いか? 一人では難しいんだろう?」
まさかの申し出に、さすがに声が絡まってしまった。渡部長がじっとこちらを見下ろしている。
まるで蛇に睨まれているような気持ちで、ひどく落ち着かない。
答えを出し渋っているうちに、渡部長はすでに決定してしまったらしい。
「きみは先にはじめていてくれ。すぐに向かう」
「あ、……はい。ありがとう、ございます」
何も訴えかけられないまま、結局鍵を受け取って、かすかに触れた指先に過剰なくらい体が反応してしまった。
かなりの苦手意識になってしまっていることを必死に隠して、渡部長の微笑みに言葉が凍り付いてしまった。
「あとで」
はじめて見たような笑顔だった。まるで、恋人に見せるみたいな。