【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
遼雅さんは今頃、ちゃんとお昼ご飯を食べられているだろうか。朝はしっかり摂っていたけれど、今日の商談さきは、かなり話が長引くことが多い相手だと知っている。
ふとした瞬間、あっと声をあげる束の間、怒りたい時、思い悩むとき。
何でもないそのときどきに、切り取ったどこかの、何気ない存在について声に出して伝えたい相手とは、いったいどんな存在だろう。
ただしく恋なら、すてきすぎて、まぶしい気がする。
それはまるで、遼雅さんの瞳のうつくしさのようだ。
誰もいない、会社の隅っこで、ほとんど確信している感情をひっそりと吐き下ろしていた。
手に持っている鍵を穴に差し込んで、くるりと回す。想像通りに開錠されて、それがどうしてか面白かった。
遼雅さんがあまやかしてくれるのなら、すこし、頑張ってしまおうか。
入室してはじめに、ほこりの匂いを感じていた。
あまり長時間いたくないような空気の淀み具合だ。どこかに窓があるのだろうか。真っ暗闇の室内に二歩目を踏み入れて、すぐ近くの壁に手を擦らせてみる。
ざらついた感触は、あまり清潔とは言い難い。
本当にこんなところに、設立からの資料が置かれているのだろうか。
会長の性格なら、まず初めにデータ化をしていそうなのだけれど。
「あれ……、でんき、ど、こ……?」
スイッチがなかなか見つけられない。ざらつく感触に眉を顰めながら、左右を両手で触ってみる。
「ん……? っきゃあ!?」