【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

何度か試しているらしいけれど、まったく反応する様子がない。5度試した壮亮が、すぐに諦めて舌打ちをしているのが聞こえた。


「そうくん、舌打ちはだめだよ」

「うるせー」


私と二人の時にはいつも暴君っぷりを発揮しているのに、バリバリの営業マンとしてめきめき頭角を現しているらしい。

まさか大人になっても一緒にいられるとは思っていなかったけれど、今でも根はやさしい大切な幼馴染だ。


「渡は?」

「ええと、まだ来てないみたい」

「ああ? こっちは昼返上してるっつうのに、クソ野郎」

「そうくん」

「はいはい、ブチョーな。ブチョー。んで? 何しろって?」

「周年記念のリーフレット作るのに、設立からの資料が欲しいって」

「はあ? 昼に?」


不機嫌をまったく隠すつもりがない。

すこし笑えて、肩の力が抜けてしまった。お昼休みを返上することになった壮亮には申し訳がないけれど、ここに渡部長と二人は心が折れそうだ。

いまだに力の入らない体にまた笑ってしまう。


「ごめん、そうくん、まだ力入んない」

「どんだけビビったんだよ。あのな?」

「――何をしている?」


壮亮が声をあげる前に、後ろから音が鳴った。

崩れかけている私を抱き起しているのは壮亮で、暗がりの中で、倉庫に男女がいること自体があまりいい印象ではない。

良い印象ではない男女が抱き合っていたら、想像することはただ一つだ。
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