【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「……りょう、がさん」
「うん」
左手の薬指を、慈しむように撫でられていた。遼雅さんの癖だと思う。
見なくても私の薬指を探り当てられる指先に苦笑して、私が笑った意味がわからないらしい遼雅さんが、首を傾げた。
「何でもないで、す」
「うん? 俺は知りたい」
「たいしたことじゃないです」
「俺は、きみのことなら、どんなことでも知りたい」
『――毎日、誰よりも長く見つめていたい人のことなら、どんなことでもわかりたくて必死になるでしょう』
耳の奥で反芻する。
何度思い出しても、遼雅さんらしいあつい言葉だった。胸に内に燃え広がって、消えてくれない。
「今日」
「は、い?」
苦笑をひっこめた私の頬をやわく、なぞるように撫でてくれる。あたたかい爪先に胸が熱くなって仕方がない。
邪《よこしま》に触れていた手は、いつものように私の両手に繋ぎ合わされている。
もう抵抗するつもりなんてすこしもなくなってしまっているのは、気づかれているのだろう。
溶けてしまいそうな私に向けて囁く。
「渡さんが、第一倉庫の鍵を持ち出したと聞きました」
すべてが彼の掌の上だ。
彼ほどの力をもってすれば、それが何に使われようとしていたのか、わかってしまうのだろうか。
瞳が相変わらずあまい。それなのに、有無を言わせず、そらさせるつもりもない力がこもっている。