【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「……返却したのは、渡さんではなく、先ほど柚葉さんと一緒にここにいた、峯田さんだそうです」
「は、い」
上司のような問いかけなのに、声色のあまさで、咎められているわけでも、監査を受けているわけでもないことがわかってしまう。
遼雅さん本人として、私の口から話を聞こうとしてくれているのだろう。
「俺は頼りない?」
まっすぐな視線が絡んでいる。
すこし切なそうな瞳に胸が詰まって、考える間もなく首を横に振っていた。
「いえ、そんな」
「第一倉庫は長いこと蛍光灯を取り換えてないんだ。あそこに入るような用事はないから。荷物も整頓されてないし、普段は誰も近寄らない場所なんです。柚葉さん、言ってる意味、わかりますか」
「……わかり、ます。軽率でした。ごめんなさい」
壮亮にも言われたことだ。
よくよく考えれば、おかしなことだった。わざわざ私に頼むようなことでもないし、お昼休みにはじめるべき業務でもない。
「怒ってないよ。……ただ、絶対に守るって誓ったくせに、危険な目に合わせた自分が不甲斐ないだけだから」
「それはちがいます」
「でも、柚葉さんは恐ろしい目に遭う可能性もあった」
「それは」
「……だから、今度はぜったい、俺を頼ってください」