【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「じゃあ、お迎え、お願いしてもいいですか?」
『それはもちろん。光栄です』
「ふふ、じゃあ、待っています」
『すぐに行きます。それまでに何かがあったら、すぐに連絡すること。いいですか?』
「はい。承知しました」
途切れた携帯をコートのポケットに押し込んで、カートを押していく。
かごの半分ほどが埋まったところで、後ろから優雅な足音が聞こえた気がした。
振り返って、まっすぐにこちらに歩いてきてくれている男性と目が合う。思った通り、我が旦那さんだ。
「柚葉さん、疲れているのに、ありがとう」
出会い頭に、微笑みながら感謝を述べられることも、なかなか無いような気がする。
流れるような仕草でカートに触れられて、思わず押していた手を離してしまった。
「俺が押します」
「……遼雅さんのほうが、お疲れですよ?」
「目利きはお任せします」
「わかりました。任せてください」
一度家に帰ったはずなのに、会社から出たときと同じ格好で駆けつけてくれたらしい。
よほど急いでくれたのだろう。やさしい事実に胸が温かくなってくる。己の感情を自覚すると、あからさまにいいところがたくさん見つかってしまうから厄介だ。
「遼雅さん、一週間お疲れさまでした」