【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
もちろん、遼雅さんの料理のセンスは完璧だ。
包丁さばきも味の感覚も、分量も、すべてよく料理をしている人にしかわからないような手際の良さで、進められている。
隣に立っているだけで、私はほとんど仕事をしていないような気がする。
鍋を丁寧にかき混ぜながら、サラダを盛り付けていく遼雅さんの真剣な瞳を盗み見ていた。
「うん? どうしたの?」
かけられる声は、まるで会社で会う時とは違う。
もっとずっとあまい。
砂糖とも、はちみつとも言い難い。もっとあまくて、どろどろで、とろけてしまいそうな何かだ。触れてしまったら、指の先から、とびきりのあまさに制圧されてしまう。
「遼雅さん、同棲したことはないんですか?」
唐突な問いかけのようで、何度も聞きかけた質問だった。
聞いてしまったら、自分の感情が暴かれてしまいそうで黙り込んでいたくせに、恋心とは単純なものだ。全部を知りたいと思ってしまう。
「柚葉さん以外にですか?」
「はい。遼雅さんと、ずっと一緒にいたくなってしまう女性はたくさんいたんじゃないかと思って」
遼雅さんはすべてを一人でこなすことができる、完璧な人だ。それがなおさら、私が何かをしてあげたいという闘争心を掻き立ててしまうのだろうか。