【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「――では、佐藤さんは巻き込まれてこんな目に遭ったのか」

「はい。申し訳ありません」

「いや、わしにも責任はある……。まさかあそこの娘さんが、そんなことをするとは」

「……やはり私は家庭を持つことを諦めたほうが良いということかと思います」

「うーむ、交際すると関係がこじれるとは……」


誰かの声がする。

瞼を押し開いてみれば、大きな背中が私を守るようにベッドわきに立っているのが見えた。

ぼんやりと、何が起きたのかを考えながら、橘専務の先に会長が立っているのを確認する。


すこし前まで担当していたその人は、この状況に眉を顰めているようだ。

普段はいつも、盆栽を趣味にしている優しいおじいさんだ。担当が外れる時にも、随分と気を使ってくれた。

目が合ったら、詰めていた眉を和らげて、私を見つめてくれた。


「あ、」

「佐藤さん、気分はどうだ?」

「会長……?」

「わしが整えた縁談のせいでひどい目に合わせてしまったらしいね。申し訳ない。代わりにお詫びしよう」

「え、いえ。大丈夫です」


耳の聞こえが悪い。

ぼやけて聞こえる声に不思議に思いながら、勢い良く振り返った橘専務と目が合った。会長がここにきていると言うことは、やはりあの女性は専務の婚約者だったのだろう。
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