【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
まるですべてがお見通しだ。
視界にぐちゃぐちゃになったソファクッションと、テーブルの端に置かれたケーキのプレートが見えて、すぐに目をそらした。
勝手にバスルームへと進んでいく遼雅さんに、抵抗する言葉すら見つからない。
「俺がぐちゃぐちゃにしたからだね。お詫びに綺麗にする」
「ん、もう、けってい、ですか」
「うん。……あきらめて、俺にあまやかされてください」
やさしく囁いて、耳に唇を触れさせてくる。
どうしようもなくあつい体にほだされて、結局目立った抵抗もできずにバスルームに押し込まれてしまった。
すべてを丁寧洗われて、すこしも手を使わないまま、のぼせそうな体を抱き起される。
バスタオルに包まれて、あっけなくベッドの上におろされてしまった。今日家に帰ってきてから、私一人でこなせたことが、どこかにあっただろうか。
思いだせない。
もう、ただ遼雅さんの匂いにつつまれてしまった。
やわく抱きしめられて、鼓動の熱さにぐるぐると目が回ってしまう。
こんなにも情熱的に尽くされたら、もっと好きでどうしようもなくなる。
「ゆず」
「あ、もう、あつ、い」
「うん、すごく、あつそうだ」
「あたまのなか、りょうがさんで、いっぱいです」
「うん?」
「どう、したらいいの」
「あはは、もう。かわいいな」
どうしたらいいのって私は本気で聞いているのに、どこまでもやさしい瞳は静かにあまく、笑っている。
夜はあつい。
もう、あつくるしいくらいで、眩暈がとまらない。
「そうだね、そのまま、俺の全部を受け入れて」
「りょう、」
「全部俺にくれる?」
わけもわからないまま、頷いている。
「ゆず」
ただ、うれしそうな遼雅さんが顔を寄せてくれる。
あまい指先の熱を頬に感じて、抗うことなく、ゆっくりと瞼を下した。
とっくに、溺れているような気がする。