【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
おさとうはちさじ
本当に、驚いてしまうほど穏やかな日が続いている。
渡総務部長からの業務についても橘専務が早々に手を打ってくれたらしく、定時ぴったりに退勤できる日が続いていた。
専務としても外勤や会合参加の数が緩やかに減少していて、最近は二人でキッチンに立つ機会が増えた。
遼雅さんは時間があればあるだけ私を甘やかそうとしてしまうから、最近はずっと身体があつくて仕方がない。
『ゆず』
掠れた低音で呼ばれると、感情にごまかしが利かなくなってしまうから困っていた。
昨日の夜も丁寧に、爪の先から頭のてっぺんまで熱を灯されて、くたくたのまま抱きしめられて眠ってしまった。
熱を帯びた気怠い身体に触れる、遼雅さんの高い体温が心地良い。
一度知ってしまうと、病みつきになるからだめだと思う。
ため息を打って、パソコンの右端に表示されている時刻を確認する。朝の来客から、橘専務はお客さんと二人で役員室にこもりっぱなしだ。
ちょうどお昼を迎えかけているから、いくらなんでも、そろそろ出てくるだろう。
予想通りにドアの開閉音が響いた。
談笑する男性の声が二つ聞こえてくる。
そっと立ち上がって、コート掛けにかけられた来客の男性のコートを手に取った。